なぜ高田世界館へ足を運んだか…といいますと、この映画を見るため(+舞台挨拶w)でした。
仲代達矢さん主演の『NORIN TEN』
この映画を新潟まで見に行った動機は、村上新悟さんが舞台挨拶に来るという情報を掴んだからという極めて不純なものでした。映画見る前日までまともにタイトルも覚えていなかったくらいで…今から思うとものすごく失礼でした、私。申し訳ないです。
見る前は正直、けっこうヘビーな内容なのかなと思ってました。稲や小麦の品種改良を成功させた稲塚権次郎さんという方の人生を追ったもので、映画的にはそういった研究についてのことが中心で分かりづらいんじゃないか…みたいな。
ところがどっこいw、この映画は育種(品種改良もの)だけではなく、しっかりした人間ドラマが描かれていたんです。特に夫婦愛!なので、すごく感情移入しやすかったし育種の研究シーンも見やすい作品でした。
舞台挨拶の関係上、25日と26日の2回見たんですが…それがすごくよかった。1回目見た後にガイド本を購入して(←これにはちょっとしたドラマがありますが)読んでいたおかげもあって2回目はさらに心に沁みました。
特に権次郎さんとイトさんの夫婦愛に焦点を当てて見ると、この作品はものすごく泣けます。私、2回目はこの二人の姿を見るだけで涙が止まりませんでした。イトさんの愛が本当に寛大で深くて思い出すだけでも泣ける…。それだけに後半の展開は衝撃的で、その後の権次郎さんの生活が変わっていったのも素直に頷けるし、切なくて切なくて仕方なかったです
。
権次郎さんが創りだした稲や麦は現在の世界の食に大きく貢献しているそう。あのコシヒカリも権次郎さんが祖になっているというのも驚きましたし、インドの食料事情を支えたのも権次郎さんが編み出した麦(農林10号)だったというのも感動だし。「NORIN TEN」は権次郎さんとイトさんの夫婦愛から産まれたものじゃないかなと思いました。
特に大きな事件もないし、ストーリー的には比較的穏やか。ですが、富山の美しい情景や昭和初期から中期にかけてのノスタルジーを感じさせる映像はなんだか懐かしさを感じさせますし、それに、日本人に生まれてよかったなって思わせてくれました。
なんていうか、日本人としてのDNAに沁みてくるような…そんな映画でしたね。
仲代達矢さんは晩年の権次郎を演じているので出番的には多くないんですけど、それでももう、圧倒的な存在感です。ちょっとトボけた可愛いおじいちゃん的なところとか、献身的にイトさんに寄り添うところとか、本当にどこをとっても沁みます。ラストシーン、手を震わせながら食事するシーンはすごく自然すぎて本気で心配になるほどっだったし。やはり仲代さんはすごい役者さんだなと思いました。
物語の半分以上を権次郎さんとして演じていたのが無名塾の松崎謙二さん。舞台的なお芝居だと感じることもありましたが、実に魅力的な権次郎を演じていらっしゃって、やっぱりさすが無名塾の役者さんだなと思いました。イト役の野村真美さんとの夫婦愛のシーンがものすごく温かくて、不器用な優しさのお芝居がすごく活きていたと思います。
あと、益岡徹さんの存在感も素晴らしかったです!権次郎との別れの能シーン、あれがすごく日本的で印象に残りました。
そして、村上新悟さんですが、出番は確かに少ないですがw、権次郎を温かく導く堀口先生役がすごくハマっててよかったです。声は「真田丸」よりも高めでしたね。なにせ、この堀口先生がいてこその稲塚権次郎なわけなので、けっこう重要な役。思ってたよりもセリフもあったし、青年期の権次郎が結婚するときにもお呼ばれしたりしてて、個人的にはなんか新鮮な村上さんの芝居見れて嬉しかったです。
この役で「種の起源」の講義をするシーンがあるんですが、ほんの少ししか説明セリフ使われてなかったにもかかわらず相当量覚えて現場入りしたという村上さん。熱い役者魂に改めて惚れ直した。
ちなみに、この映画で村上さん、堀口先生以外にもう一役で登場しています。「これ分かったらすごい」と言われてたので、けっこう目を凝らして見たんですが(笑)、私の予想のはるか斜め上を行く役柄で登場してたことが判明www。あれは分からんわ。
昨年公開の映画なので、どこで上映されるか分かりませんが(世界館では8日まで)、とても良い映画だったと思うのでぜひいろんな人に見てほしいなと思いました。
1回目の上映が終わって客席を出ると、村上さんと稲塚監督のサイン色紙が増えてました!ただ、下にあるのと上にあるの…逆に貼った方がいいんじゃないかと思ったのはここだけの話(笑)。