
日本でも人気の高いミュージカル『ミス・サイゴン』。2014年にイギリス・ロンドンで行われた25周年記念公演が、日本公演25周年に併せて映画公開されました。
私は初演の頃からこの作品を見ているので、どうしても1度は映画館の大スクリーンで見てみたかったのですが…如何せん、主要大都市しか上映予定がなくガックリ


ちなみに映画料金は他とは別に設定されていて一律2500円。舞台と同じく1幕と2幕の間に休憩が挟まっているのも特徴的。さらには2幕が終わった後の特別カーテンコール(スペシャルフィナーレ)前にも10分の休憩があって…映画を見に行っているのに舞台を一本見たような気持になりましたw。
映画の料金として見ると少しお高めの設定ではありますが、臨場感あるし本場の舞台映像と音を体感できるという意味ではこの金額はかなりお得


さて、映画についてですが・・・まず驚かされたのが映像の臨場感です。基本的にはロンドンで行われた25周年記念公演の模様がベースになっていますが、所々は後日別にキャストだけ集めて映画用に撮影した映像を挟んでいるそうです。なので、客席からは見えないような角度の風景やキャストの表情が間近にものすごくリアルに感じられて…舞台の最前列で観る以上の迫力がありました

舞台映像には変わりないんだけど、時々そこが舞台の上ではないような感覚になることもしばしば。実写映画としてのドラマを見ているかのような錯覚になるあのリアルさは本当にすごかったです

それから、キャストが『ミス・サイゴン』の世界観にすごくマッチしているというのも印象的でした。
この物語はベトナム戦争の悲劇を描いているので、登場人物の多くはベトナム人…つまりアジア系。なので、顔かたちがアジア系の役者さんが多く配役されているのが特徴的です。ベトナム人役の役者さんはアジア系の顔立ちでアメリカ人役の役者さんは欧米系の顔立ち。アメリカ人役は白人と黒人が入り混じっている配役になっているので余計リアルな当時の様子を感じることができました。
日本版は当然のことながらみんなアジア系役者なので、ベトナムとアメリカの本物感といった点では表現しづらい部分はあります(エレン役の役者は時々金髪のかつらをつけていたりしましたが)。
もう一つ感じたのが、日本の『ミス・サイゴン』も引けを取らないなってことでした。
来日公演などを見て「日本はまだ追いつけないことも多いんだな」と感じることって時々あったりするんですが、今回は「日本版も負けてないな」って思えたんです。それはキャストにもよるところはあるのですが、個人的に最高だったなと思えるキャストが出ていた日本公演とロンドン公演の映像とを思い比べてみた時、大きな差みたいなものを感じなかったんですよね。それがなんかちょっと嬉しかったです

そうそう、字幕について。字幕表記が亡くなられた「岩谷時子」さんになっていたのが胸熱…

再演を繰り返すうちに、岩谷さんの訳詩がだいぶ変更されてしまい…最新版では「いくら分かりやすくとはいえその訳詩はどうよ」って思ってしまうような過激なフレーズも増えて残念に思うこともありました

ちょっと残念に思ったところは…実際の舞台公演映像がベースになっていたためにお客さんの派手な拍手が入ることだったかな

日本でもビッグナンバーのあとなどには拍手が入ることがほとんどなのですが、海外のお客さんの拍手は日本のそれとはだいぶ雰囲気が違うんです。どんなシリアスなシーンでも、素晴らしい歌声でドラマを盛り上げるナンバーがあった後はまるでコンサート会場か!?ってほどの歓声と拍手が鳴り響く

だけど、海外の人はその場その場で素晴らしいものに最大限の賛辞を贈るという意味で大歓声が毎回湧き起こる。ストーリーよりも、演じ手に対する称賛が熱い。これはたぶんお国柄かな~。たぶん海外の人が日本の公演を見ると「客の反応が薄い」って思ってしまうのかもしれない。
今回の映画はそんな感じで…どんなにシリアスな流れでもナンバーが終わるごとにコンサート並みの大歓声が入ってくるので、ちょっとそこで流れが止まっちゃう感覚は正直ありました。素晴らしいキャストによる最高のパフォーマンスの世界にどっぷり浸りたいと思う派の私的にはそこの違和感だけが残念な点でしたね。
以下、内容について少し。
続きを読む