野村萬斎さん主演の映画『花戦さ』を見に行ってきました!萬斎さん出演の映画を見るのは実に「陰陽師」シリーズ以来だったかも。『のぼう~』は時間がなくて映画館へ行けず結局テレビでほうそうされたものを見ました
公開されてから約3週間になりますが、大きな映画館ではないながらもけっこうお客さんが入っていたのでまだ人気は高いようです。ただ年齢が上の方が多いからか携帯のマナーが悪くて(苦笑)。映画の途中でスマホ確認するの、ほんっとう~~~に、やめてほしいっすあれ、まぢ、眩しくて超迷惑なので!!!

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宣伝ポスターがすごく華やかで目を惹いたので、映画の内容もけっこう賑やかでコメディタッチなのかなって思っていたのですが、個人的な感想はどちらかというと「しっとり」した雰囲気の印象が強いです。
時代劇ではありますが、派手な戦やチャンバラ場面はなく・・・どちらかというと市井の人々の生活が中心だったかなぁと。歴史的に有名な武将もたくさん登場してきますが、萬斎さん演じる池坊専好と彼を慕う人々との交流シーンがとても印象に残りました。なので、後半のあの怒涛の展開がすごく切なくて…専好の哀しみとやるせなさが見ているこちらにもストレートに伝わってきて…けっこう泣いてしまった。見終った後も心にジンワリと内容が沁み渡る…そんな映画だったと思います。


「花戦さ」オリジナル・サウンドトラック
「花戦さ」オリジナル・サウンドトラック久石譲

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音楽は久石譲さん、華道の世界と過剰過ぎない旋律が見事に調和していて心に残りました。そして脚本が現在大河ドラマ「おんな城主直虎」を担当している森下佳子さん。やっぱり私は森下さんの書く物語の世界が好きだなぁと実感しました。ところどころでじわっと優しく切なく心に響いてくるセリフや展開の作り方が見事でした。

そしてなんといってもこの映画の最大の見どころは、池坊専好が紡ぎだした数多くの生け花たちです。冒頭に登場した、信長に献上した松はまさに大作!!!生け花に関してはまるで無知な私の目から見てもハっと息を飲むような迫力と美しさで…そこだけ時が止まったようでした。
この冒頭の松の盆栽と、映画のクライマックスに出てくる作品がリンクしている構成も上手いなと思います。そのほかにも個性的で目を惹く作品が目白押し。これはぜひ映画館の大画面で見てほしいですね

以下、ちょっとネタバレを含んだ…キャストについての感想です。


まずは主人公の池坊専好を演じた野村萬斎さん
信長との対面シーンでは怖いもの知らずで生き生きとした若者っぽいのに年月を追うごとにどんどんと人物像が深くなっていくお芝居はさすがだなぁと思いました。専好は花の才能は抜群なのに人の名前を覚えることができず大役を引き受けざるを得なくなってヘタレちゃうといった情けない一面もあるんですけど、狂言師の萬斎さんがそれはそれは表情豊かに演じていたのですごく見応えありました。萬斎さんの表現の仕方はともするとちょっと派手なので好き嫌い分かれるところだと思うのですが、私は好きですよ。 利休と対峙してお茶を飲んだ時に感情が溢れてこれまでのストレスが涙と一緒に出てしまうシーンは特に印象深かったです。あの場面の専好さん、すごく可愛かった
そして何より、姿勢が抜群に美しい!!立ち姿も座り姿も手を合わす姿も…どれをとっても最高級のものを見ている感覚。陰陽師の安倍晴明見た時も感動したけど、あれから少しも変わってないのは本当にさすがとしか言いようがありませんね。
クライマックスで秀吉を諌めるための松を披露した時の、あの、何の迷いのない真っ直ぐな視線は一見の価値ありです!!私、思わず涙出たくらいですから…!ぜひ見てほしい。

専好の親友という立場で描かれた千利休を演じた佐藤浩市さん
さすがのどっしりとした佇まい!お茶をたてる時の静かさには貫録が漂っていました。専好と再会した時に覚えていなかったことを知ってちょっとスネ顔になるシーンとかは面白かったな。微妙に会話が擦れ違い気味になってたりして困惑したりして…でもそこから親近感湧いて…みたいな流れが面白くて良かったです。
印象的だったのは秀吉との対峙。意にそぐわない金の茶室に協力させられたり、激高されれば足で踏みつけにされたり…それはそれは散々な目に遭ってたんだけど、利休は嫌悪感は持ちながらも秀吉に憎しみの感情を持ったようには描かれていなかったと思います。切腹前夜に専好が泣きながら「謝るよう」説得しに来たとき、「自分にはこうすることでしか秀吉と対峙できない」ときっぱり語った言葉がとても印象的でした。自らの死で秀吉に訴えようとしたっていうのがなんとも切なくてねぇ…。専好の持ってきた梅の花が開く前に切腹したというのも泣けました

専好の前に立ちはだかる豊臣秀吉を演じた市川猿之助さん
猿之助さんがまだ亀治郎だった頃、テレ東系のドラマで秀吉を演じていたので真新しさはなかったんですが(笑)「サル顔」と呼ばれるにはかなりリアルだなぁと改めて思っちゃいました。利休に対して激しく嫉妬心を燃やす秀吉、特に天神さんでの茶会での出来事は…あれはちょっとだったかもと同情しちゃった。金の茶室に民を招待して茶を振舞いいい気分になってたものの、最終的には専好の生け花効果もあってみんな利休の方に行っちゃって…挙句の果てにみんなから笑いものにされちゃうわけですからね。あれはキツイかなぁと。とにかく自分が一番じゃないと気が済まない秀吉には耐えられなかっただろうなと思いました。
利休が切腹した後も、秀吉の利休へのこだわりは尽きることなく…専好の周りの人々をも犠牲にしていく残忍極まりない行動に出ていく。そんな秀吉に、専好は憎しみではなく包み込むような戒めといった形で対抗した(花戦さ)。それを目の当たりにしたときの秀吉の反応がとても印象深かったです。結局秀吉は、利休に対してものすごく歪んだ友情を抱いてしまってたんだなぁと。大きな松の前で崩れ落ちるシーンは泣けました

そのほかにも魅力的なキャストさんがたくさん。今回女優さんはほぼ登場せず、専好が助けた森川葵さん演じる「れん」が紅一点といった感じでしたね。今一つ彼女の存在意義が見えてこなかったのが残念でしたが、専好がれんのために持ってきた蓮の花が順番に開いていく場面は面白かったです。
佐々木蔵之介さんの前田利家は出番こそ少ないながらも物語を締める場面できっちりいい仕事をしていたのが印象的でカッコよかったです。高橋克己さん演じる専好の幼馴染の吉右衛門はこの作品の中の癒し的存在。まさかあんな展開を迎えるとは思わず見ていてすごくショックを受けました。専好の弟弟子・専武役の和田正人くんは要所要所で専好のフォローに回ったりとてもいい仕事してましたね。秀吉に献上する松を専好が始める前に「自分たちも従う」と頭を下げたシーンがとてもよかった。

あと、中井貴一さんが信長を演じていたのも見所かも。まさか自分に信長が回ってくるとは思わなかったという貴一さんですがww、凛とした静かな力強さを醸し出す芝居はさすがでした。



全体的にとてもいい作品だったと思います。見に行ってよかった