今月初めに見た前編に続き『3月のライオン』後編もさっそく見に行ってきました。今回は公開初日での観賞です。
いまだにアニメも見れていないし原作も読んでいないので、私の中ではこの映画だけが『3月のライオン』の全てってことになります。人気のある原作はどうしても比べてしまうところがあるから、ある意味知らないで行ったということが正解だったかもしれません。

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前編の感想はこちらです。


前編では主に神木隆之介くん演じる主人公・とライバルたちや家族との「闘い」に焦点を当てていた印象がありましたが、後編は零が一人の人間として精神的に成長していく過程に焦点を絞って描かれていたように思います。天涯孤独と思い込んでいる彼がいかにして「愛」に気づき向き合っていくのかのドラマが丁寧に描かれていて、何度も心を揺さぶられ涙しました
それから、「父と子」の関係にスポットライトが当てられていたのも良かったです。それぞれに深いドラマがありました。零と幸田の関係は前編ではあまり触れられていなかったように思ったのですが、後編では二人の関係に一定の決着をつけた形になっていて見ていてホッとしたしなかなかに感動的でした。
あと、前編で親子関係に疲れてすっかり擦れた女になってしまった有村架純さん演じる香子がクライマックスでようやく「気づく」シーンがあったのもよかったです。幸田さんの静かなメッセージが胸に沁みました…。できればもっと早くに言ってほしかった言葉だよなって思ったけど、そううまくいかないのが親子なんだろうなって。

以降、ネタバレに触れた感想になります。






映画を見てまず初めにビックリしたのが、零と加瀬亮さん演じる宗谷名人との対局が早くに実現していたことです。エキシビション的対局ということではありましたが、将棋界の神のように描かれている宗谷名人ともう対戦してしまうのかとちょっと戸惑ってしまった(すみません、原作読んでないもので 汗)
でも、二人の対局風景は実に美しかった… 。零は結局負けてしまうけど、それすらも何だか浄化されているような…加瀬さん演じる宗谷名人の雰囲気がそう思わせているのか…とにかくすごく印象的な場面でしたね。でも、そんな名人にも実はあるマイナスポイントがあることが判明。神のように思われている彼も実は「人間」なんだとハッキリとそこで認識させられます。対局前の零に幸田さんが言ったように、宗谷名人は「同じ人間」なんだと…彼には彼なりの苦悩があるんだろうなと思います。欲を言えば、もう少しそのあたりの人間らしい宗谷名人も見てみたかったかも。

川本三姉妹と零とのエピソードは今回一番印象に残ったシーンの一つです。川本姉妹とその祖父たちと交流を続けていくうちに、零の中には確実に孤独だったころのものとは違った感情が生まれていたと思うのですが彼はそのことをはっきり自覚していない。それでも彼女たちと接しているときの零は一番幸せそうに見えます。
そんな時に起こったのが、次女・ひなたの学校でのいじめ事件です。友達をかばったばかりに標的にされてしまい誰も助けてもらえず孤立していたひなたがもう・・・見ていて辛くて辛くて。担任すら見て見ぬふりっていうのがもう、あり得ません!でも、あまりの辛さに押しつぶされて号泣する中で彼女は零の前で「自分は間違ったことは一切していない」と叫ぶ。あの強さはどっから来るんだろうって、見ていて胸が締め付けられるような気持になって思わず涙が…
その彼女の言葉に、零はかつていじめに遭った体験から孤立感を深めていた心が救われたような気持にさせられる。
「君は僕の恩人だ」
この言葉も深いなぁって…思わず涙が。どんだけ追いつめられてたんだよっってね…。それだけに、ひなたの強い想いはなおさら沁みたんだろうなって思いました。

このあと、ひなたの勇気ある行動によっていじめは収束していくのですが…実際のいじめはたぶん、あれだけでは収まらないことってあるんだろうなって感じてしまった…。現実は映画のようにはいかないだろうなと。でも、少しでも、ひなたの行動が、勇気と希望に繋がってくれたらいいなとも思いました。

いじめは解決したものの、零は自分が何とかすると言ったものの何の助けることもできなかったことに苦しみます。あまりにも心の中で大きな存在となっていた人の心を自分が救いたいという強烈な思いに駆られるあの気持ち、わかる気がする。零は彼女たちのヒーローであることで何とか繋がっていたかったんじゃないかなって。
その気持ちが歪んで出てしまったのが、川本家から自分勝手に家を出て行方知れずだった父親が現れた時です。ここに伊勢谷さんを持ってくるのか!と思わず納得してしまった(笑)。落ちぶれてる風なんだけど、やっぱりどこかカッコよさが滲み出てるお父さんでしたね。川本一家のために今度こそ力になりたい零は彼女たちの父親の事を徹底的に調べ上げて侮辱の言葉を羅列。ただ彼女たちを救いたい一心…というよりかは、なんとしても川本姉妹たちとの絆をつなぎ止めようと必死になっている感じが透けて見えて…その想いが切なくてものすごく泣けました

でも、どんなにひどい男でも、彼女たちにとっては「父親」。やはり赤の他人に侮辱される父というのは耐えられなかった。それ故に、川本姉妹は零を突き放してしまいます。この時の絶望感あふれる零の心を想うと…もう本当につらくて涙が止まらなかった

 一方で、師子王戦決勝の相手である後藤も大きな心の傷を負っていました。あの無愛想で無骨な後藤にも悲しい背景があって…。対局の途中でいても立ってもいられず飛び出していくシーンも涙が出ました。病院のトイレで一人きりで肩を震わせて泣くシーンとかたまらなかったです
零も、後藤も、二人とも対局するときはお互いに「将棋」以外何も持たない者同士だった。この二人の息詰まる対局シーンもスリリングでしたが、零が追い詰められたときに起死回生の一手を打った瞬間さまざまな人の顔が浮かぶシーンがまた号泣モノでした。あの時零は、将棋以外の大切な存在をようやく自覚したんですよね…。その一手を見て心の中にこれまでと違う衝動が走ったような表情をした後藤もすごく印象深かったです。
あの対局は「勝負」以上の何かを二人にもたらした。そのドラマがものすごく感動的でした。

大切な存在をはっきり認識した零は、ようやく素直に将棋と向き合えた気がします。そして、育ての親の幸田への想いもこれまでとは違うものに。
「将棋」を通じて、様々な人が一歩ずつ心の再生に向けてもがきながら進んでいく姿が非常に印象深い作品だったと思います。

島田さんや二階堂君たちの活躍が今回少なかったのはちょっと残念でしたけどね(あ、倫也くんも)
あと忘れてはいけないのが、高橋一生くんが演じた林田先生。いつもスーパーカップのラーメンすすってるんだけど(笑)軽い乗りながらもいつも零のことを気にかけて話しかけてくれる。特別何をするってわけじゃないのにちゃんと寄り添ってる姿がすごく印象的でした。零の大切な人リストにもちゃんとインプットされててよかったです

いま、中学生棋士が破竹の連勝を重ねて話題になっています。思わず『3月のライオン』の零と重ねてしまう。何だかちょっと本当に将棋のことを勉強してみたくなった今日この頃です 

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入り口で羽海野チカさんのイラストカードをもらいました!